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2番打者論は面白い

Number Webの氏原英明氏による『2番は“ゲームを動かせる打順”。野球を変える「2番打者再考」論。』より。

まずは、西武の栗山巧。
2008年に、2番打者として最多安打のタイトルを獲得し西武の日本一の立役者の一人となったことは未だに印象に強く残っている。既に6年前ではあるが。

僕の前が片岡さん、中島さんとおかわりが後ろにいる打順で、そこに挟まれて2番をやれたのは大きかったです。最初は、苦しみながらヒットを打つことを考えていたんですけど、どうやってヒットを打つかと考えたときに、流れに沿った中でプレーした方がヒットになりやすいことがわかってきました。

たとえば、片岡さんはその当時50~60の盗塁がありました。単純に考えたら、相手のバッテリーはスチールを防ごうと思って、外のまっすぐが多くなる。またゲッツーを狙いに来た時は、外のシュート系が多くなる。そして、後ろに中島さんとおかわりがいるから、僕には四球なんか出せないんですよね。つまり、ストライクゾーンで勝負してくる。

早めに追い込んでくるから、カウント球は、緩い球から入ると考えて打席に立っていました。

昔と違って、前の打者が出塁したら2番打者は必ず送りバントのような画一的なパターンはなくなってきた。
そして記事内でも、最近は良く聞く話ではあるが、守備側は送りバントを嫌がっていないという話に。

2013年、序盤戦を主に2番で起用された千葉ロッテの角中勝也は、打者心理と野手心理の両面があると語っている。

1番が先頭で出塁するとチャンスですけど、さらにそこで2番がヒットを打てば、一、三塁になって得点チャンスを広げられる。自分的には、簡単にバントをするよりも、そっちの方が相手としては嫌なんかなというのは感じました。

バントするのがダメってことじゃないんですけど、2番がヒットでつなげば、チームは盛り上がると思いますし、クリーンアップがきっちり返してくれると、1点じゃなく、2、3点入ってくるチャンスがある。守っているときも感じたのですが、先頭が出塁して、2番が打ってくる方が守りにくいと思います

セパのキャッチャーも以下のように語る。

黒羽根利規(DeNA)

展開によりますけど、序盤はバントをしてくれる方が楽です

炭谷銀仁朗(西武)

送りバントか強攻か、どっちがいいかというより、送りバントはさせた方がいいと思います。警戒しすぎて、ボールが先行する方がもったいない

投手はどう感じているのか。
中日の大野雄大こう言う。

序盤、特に初回であれば、投手は最初のアウトがほしいというのもありますから、ノーアウトでランナーが出て、打ってこられる方が嫌ですね。『ランナー二塁』は得点圏ですけど、走者が還ってくる確率というのはそれほど高くないし、得点圏打率で5割を打つ選手はそう多くないですよね。そういうことを考えると、序盤の送りバントは助かります。特に僕のようなタイプは、序盤は手さぐりで投げているところがありますから、初回だったら、ワンアウトでホっとできる部分があります

この発言からは実感が伝わってくる。立ち上がりが不安定な投手は多いだろうから、そこで労せずしてワンアウトとれるのは楽なのだろう。

栗山巧はこうも語っている。

フリーで打つという権限を与えてもらえればの話ですけど、初球から打ってもいいし、待ってもいいという役割をもらえたら、2番はゲームを動かすことができる打順やから、面白いと思います

この記事自体は当初期待したほど2番打者論に踏み込んでおらず、バント論に重きを置いてしまっているので残念だが、2番打者という存在が面白いことに変わりはない。赤坂英一氏の「2番打者論」をやはり読まねばいかんと痛感。

糸井重里とスポーツ記者赤坂英一の対談が面白すぎる

ほぼ日刊イトイ新聞で8回にわたって連載されていた、糸井さんとスポーツ記者である赤坂氏の対談『こういうやつが、いたんだよ。』。

赤坂氏の著作『キャッチャーという人生』にまつわる話が多いが、とにかく面白くて、この本もつい購入してしまった。

この本を読んでの糸井さんのキャッチャーへの印象。

村田選手って、けっこうしゃべるんですよね。
ちょっと不器用なイメージがあるから、寡黙な感じがしないでもないけど、ちゃんとことばにできる人、というか。

そんなに言葉にできる人、なかなかいないですよね。
語ってる思い出話も全部的確だし。

キャッチャーってとにかく、記憶の塊ですよね。

キャッチャーというのは、「ことばの人生」なのかもしれないですね。

続いて、巨人が西武に4連敗した1990年の日本シリーズについて、今はいずれも監督となった原辰徳、渡辺久信に訊いた時の話。

巨人では、西武の情報をいっぱい与えられたんですって。
詰め込まれすぎた結果、かえって萎縮しちゃった。
でも、西武ではそうじゃなくて、いろんなデータがそろっているなかで首脳陣が取捨選択して、「これだけを覚えればいい」という情報だけを伝えたそうなんです。

でも、いまはまったく逆で、全部詰め込めばいいんですって。
なぜかというと、いまの選手は小さいころから携帯電話があったりパソコンがあったりと、情報の洪水の中で育ってる。
要するに、昔の選手たちとは情報処理能力がぜんぜん違うわけです。
だから、思ったこととか感じたこととか全部、言ってやりゃいいんだと。

さらに、西武の打撃コーチのデーブ曰く

俺たちだったら、一度にあんなにいろんなこと言われたら大混乱したと思うんだけど、片岡とか栗山なんかは平気で全部吸収しちゃう

続いて、赤坂氏が敬愛する藤田元司について。

村田にインタビューしてるとね、藤田さんのことをしゃべりだすと止まらなくなるんですよ。
で、内部の話ですから、おおっぴらにしゃべっちゃいけない話もあるんです。
たとえば、藤田さんがどんなふうに自分をフォローしてくれたか、とかね。
藤田さんが選手に謝っていた話とかね。
話しはじめるとあふれちゃうから、必ず「ちょっと止めてくれる?」って録音を止めさせるんですよ。
こっちとしては、総合的にとってもいい話だからそれは書いたほうがいいんじゃないかって思うんだけど、「それは書いたらあかん」の一点張りで。

藤田さんにまつわるそういう話は、たとえば水野に聞いても出てくるんですけど、やっぱり「書いてくれるな」って言うんですよ。

それは、尊敬ですよね、藤田さんへの。

それほど尊敬されている人物だとは知らなかった。

糸井さんも藤田氏とは親交が深かったとのこと。

「人間は間違うんだから、年上とか年下とか関係なくちゃんと謝らなきゃダメだ」って話は藤田さんからうかがったことがあります

水野が語った話で特に印象深い藤田氏の話。

1990年の開幕戦。
篠塚さんがポール際に打ったホームランがファールかどうかでもめた試合です。

あれで同点になって、けっきょく延長12回まで行くんですけど、あの試合の先発は斎藤。
で、7回から延長12回まで、ひとりで投げてたのが、じつは水野なんですよ。

誰も覚えてないでしょう?

でも、藤田さんは見てるんです。
開幕戦の延長を抑えてくれた水野を見ていて、覚えていてくれるわけですよ。
そういう使われかたをしてもくさらず、ずっと投げているから彼は一軍から落とされない。

水野曰く

藤田さんと過ごした3年間、あれがあるとないとでは、
ぜんぜん違った野球人生になっただろう

このように藤田氏の影響は今の首脳陣世代に強く残っていると。
そして、特に原に藤田の影響を強く感じると二人は言う。

糸井さん

たとえば、試合後のコメントで、若い選手にわざとキツい言い方をして、ネジをぎゅーっと締めるところとか。
かと思うと、成績としてはよくなくても、「ああいうことでいいと思います」
結果じゃない部分を評価したりとか。

赤坂さん

あとよくやるのが、二軍から上げたばかりの若手をすぐに使う。
で、うまく活躍したときに、ほめたいと思うんですよ、ほんとは。
だけど、それを押し殺して、
「まあ、今日のところは、日々の彼の練習がいい結果につながった、というところまでしかコメントできませんね、監督という立場では」という感じで。

記者の立場としてはね、「またつまんないこと言ってる」って思うんですけど、よく考えたら、藤田さんも、なんにも言わない人でしたよ。
斎藤をあれだけの大投手に育て、ときに槙原を抑えに回し、桑田を再生し、っていう中で、「俺がああしてやったから」とか「彼らは立派だ」とか、なんにも言ってないんですよね。

藤田さんがなにか気の利いたコメントを残したとかね、名言を残したとか、ちっとも印象にないんです。

話は谷繁の話題に。上記の著作の中に登場する選手の中で図抜けた才能を持っていたと。

「持ってる」人ですよね。
たとえば村田、大久保っていうのは、逆にいうと、なにも持ってない人たちで、そこから、ないところを埋めて、上がっていった人たち。

これに対して、糸井さんが好いことを言っている。

そういう、天性のものを持った人と、そうじゃない人が混ざって存在しているのがプロ野球という世界。

そのへんのおもしろさというのは、お客さんも自然に感じるんでしょうね。
野球に限らず、その不均一なところがスポーツのおもしろさじゃないかなぁ。
いや、スポーツだけじゃなくて、どの社会もそうなのかもしれない。

赤坂氏の次の著書である二軍監督の話へ。
まずは小ネタで、巨人の岡崎。どうやら喧嘩が強いと有名なんだとか。

なんだか有名なんですよね。
でも、そうは見えないじゃないですか。
でも、当時、寮に入った若手は必ずその強さを垣間見た、という。

そして最後に、2008年の西武vs巨人の日本シリーズでの渡辺監督の采配に関して。

去年の日本シリーズの第7戦。
片岡がデッドボールで出て、走って、送って、中島の内野ゴロで同点に追いついた場面がありましたよね。

デーブと会ったとき、あの場面についての話になったんです。
渡辺監督や片岡、栗山、中島たちと、どんな話をしていたのかと。

巨人のマウンドにいたのはあのシリーズで絶好調だった越智で、正直、片岡は手も足も出ない。
そこでデーブと渡辺久信は「当たってください。当たってでも出てください」と選手たちに言ってたらしい。
そしたらインコースに来て、片岡はヒジに来たところを後ろによけずにゴーンと当たった。で、その瞬間に、「よっしゃ!」ってガッツポーズ。

で、つぎは2番の栗山。
回も詰まってるし、セオリーなら、そこで送りバントだと思うんです。
でも、デーブはこう言うんです。
「監督が送りバントのサイン、出さないんですよね」って。
かといって「打て」のサインも「走れ」のサインも出さない。
どうしたかというと、片岡が走るのを待ったんです。

あの年の西武って、「好きなときに走れ」っていう野球なんですよ。
攻守全体にわたってそういう感じで、チームバッティングで右打ちさせたりもしない。
「思い切って引っ張れ!」っていう野球でそれまで勝ってきたチームなんです。
だから、片岡に「任せちゃおう」と。
で、実際、片岡は初球に盗塁決めちゃうんです。

ただ、それは、監督が動かしたわけじゃないんです。
「どうせ走るから、任せちゃおう。ほら、走った」という流れなんですね。
あとで渡辺監督がデーブに言ったのは、
「いやぁ、送りバントも当然考えたけど、片岡のガッツポーズを観た途端、おれの頭の中からそのサインが消えたんだよ」と。

そして、バッターは3番の中島ですが、じつはあの時点で手首と脇腹を痛めてて、外野フライも期待しづらい状態だった。
だからもう、片岡の足に期待して、内野ゴロ打たせて本塁に突っ込ませるしかない。
最悪ライナーでゲッツー、ホームゲッツーもある。空振りもある。
でも、ここはサインを出して中島が叩きつけるのに期待して、片岡を走らせる。

ふつうに考えたら、リスクが高すぎると思いますよ。
でも、渡辺監督はそういうことをやっちゃえる監督なんですよね。

いや~内容が濃い対談、本当に楽しませてもらった。