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野村ノート(2) 盗塁

野村ノート/野村克也著(小学館文庫) 』より。

一三塁でのダブルスチール。セオリーは捕手の送球が投手の頭を越え、投手が捕らない or 送球が高いと判断したら三塁走者がスタートする。しかしこれでは二塁ベースカバーに入った二塁手、遊撃手から本塁に転送され、9割方アウトとなる。そこで、三塁走者に捕手の手からボールが離れた瞬間にスタートをきるギャンブルダブルスチールを指示した。この場合、捕手が二塁に投げるかどうかの読みが重要。

もう少し厳密に言えば、三塁走者は通常は三塁線の外でリードをとっているが、捕手が捕ったと同時にラインの内側に入る。外側にいると三塁手との位置関係で、捕手が横目で三塁走者を見たときにどれぐらいリードしているかがわかってしまう。内側に入っていると距離感がなくなる。

このケース、仮に間一髪でアウトになったとしても、相手の捕手にこのケースでヤクルトは仕掛けてくるという印象を与え、シーズン初めにこうしたプレーをやっておくと、その1年間は一三塁のケースで一塁走者の二盗が非常にやりやすくなった。

このような作戦の効力は相手チームだけに与えるものでなく、相手以上に味方選手に効果を発揮する。うちは他のチームより進んだ野球をやっているという思いを生じさせ、さらにデータをもとに具体的な攻略法を授けると、それならおれにもできそうだという気にさせることができる。選手の監督に対する尊敬と信頼が芽生え、他チームに対しては優越感や優位感のようなものが生じる。弱いチームには特にそういう優位感を持たせることが必要。

ヤクルト監督に就任当初は、盗塁の際、セットポジションから最初に動く個所(右投手の場合の左肩、左足または首など)を見つけたり、タイミングを計って走者はスタートをきっていた。しかしクイックがうまい投手だったり左投手には通じない。

そこでスコアラーに投手別に何球まで牽制球が続くのかデータをとって、それに応じて始動の前に走るよう指示していた。
ギャンブルではあるが、成功すると、相手バッテリーはあまりの好スタートに何か投手のクセでも盗まれているのではないかとパニックになることもあるぐらいの効果がある。

日本シリーズでの広沢の三塁スタートの遅れを反省して生まれたギャンブルスタートは、一死三塁、打者が8番土橋、すなわち次が投手という場面でよく使った。さらにこれをヒントに、どうも犠飛が打てそうもないと直感したら三塁走者と打者でヒットエンドランの奇策をあみ出すことになった。

スコアラー福田功氏 分析のポイント

『Baseball Times 20091130号』より。

分析のポイント。

投手は、まず癖がないか。球種はただの持ち球だけではなく、握りから変化に至るまでの詳細。あとは主たる攻め方。クイックはできるのか。

打者も、コース別に強いところ、失投しても大丈夫なところなどの特徴。足は速いのか、盗塁はできるのか。これ以上は企業秘密。

アメリカやプエルトリコはパワー溢れる野球。柔らかさとパワーを兼ね備えているのが、キューバとドミニカとベネズエラ。特にドミニカは民族性なのか、関節が非常にやわらかくて体がしなやか。だから日本と同じように好投手が育つ環境にある。